ぼくは、全速力でととまるに飛びつくと、ペロペロペロペロしてあげました。
ととまるは、
「んんん~~っ!」
と、声にもならぬ声を上げながら抵抗したけれど、容赦なく飛びつきながら、時々噛んだりもしました。
降参しながらもととまるは、
「また、ブサイクな・・・」
などと、失礼なことをいうので、ぼくは更に髪の毛も引っ張りました。
ととまると一通り遊んで気が済んだぼくは、お家の中を端から端まで走り回りました。
こんなに走ったことは初めてだったので、時々変な動きになっていたようで、ははまるとあねまるに笑われました。
けど、あねまるは、ぼくと目が合わないことを、この時寂しく感じていたそうです。
ぼくは、何をしている時でも、人の手しか見ていなかったのだといいます。
「ずーっと狭いゲージの中だけで育ってきて、ご飯だけが楽しみだっただろうから、ゲージを開けてくれる手、ご飯を入れてくれる手、新聞紙を変えてくれる手、手、手・・・人の手が、この子の全てだったんだろうね~」
と、寂しげに言うあねまる。
「そぎゃんだろうねぇ・・・」
と、神妙な顔つきになるははまる。
「それにしてもブサイクな・・・」
と、ととまる。
またしても侮辱され飛び掛かるぼく。
「そんなこと言ってるけど、既に洋服がペアルックたい!」
と、ははまるに言われて見てみると、車の中でぼくが着させられた服は、ほとんどととまるとお揃いのグレーのTシャツでした。
こうして強制的に、新しい息子を迎え入れることになったととまるは一言、
「俺は鼻ぺちゃの犬が好きだったちから・・・」
と小さく呟いたのでした。
コメント