そんなこんなで、とのまるになったぼくです。
あっ!あねまるによると、本当は殿丸だそうです。
「こいつが来てから俺は安らぎがなくなったぞ・・・」
と毎日文句を言いながらも、ととまるは朝から散歩へついてきます。
「別に一緒に来なくてもよかとよ?」
とははまる。
「俺は犬じゃなくてお前の見張り役だけん」
とははまるに言うと、今日も面倒くさそうに靴を履きながらも、ぼくのお散歩ひもを持ちたがります。
ははまるは、二年前に心臓の大手術をしたそうです。これまで病気なんてほとんどしてこなかったははまるが、急に倒れたことで、ととまるは大きなショックを受け、それ以来、ははまるの事をいつでも気に掛けるようになったといいます。
ただ当のははまるはというと、相変わらずシャカシャカと動き回り、周りの目を盗んでは、一人で重いものを抱えて帰ってきたり、ぼくと追いかけっこをしてみたり、いつまでも庭のお花の手入れをしていたりと、休憩もせずにせっせといつも何かをしているので、毎回ととまるから怒られています。
「だいたい、お父さんは歩くの遅かけん、とのまるが可哀そかもん !もぉ~来んでよかとにね~ 」
と、ははまるはぼくにこう言いながらも、ちょっと嬉しそうです。
さて、ぼくがここへ来て1週間ほどの頃から、あねまるはぼくにいろいろな芸を仕込み始めました。
もちろんぼくは当時とっても暴れん坊で、何にも言うことなんて聞かなかったけれど、あねまるがとっても楽しそうに僕に向かって
「お座り~」
だとか、
「お手っ!」
だとか言っては、おやつをくれるので、いつの間にかぼくまで楽しくなっていました。
あねまるは、おやつの袋の裏に書かれている一日の摂取量の目安をみながら、
「いいか?とのまる!今日はこのおやつで修業を行います!このおやつは一日に15個までと書いてあります!今日のおまわりのチャンスは15回です!いざっ!」
などと、毎日いろんなおやつを買ってきては、ぼくと修業を行うのでした。
そんな日々を繰り返すうちにぼくは、お座り、お手、おかわり、おまわり、ハイタッチ、ジャンプ、チュッ!、伏せ、ごろ~んという技を習得していました。
あねまるは、
「おまえ天才か!」
と涙ぐみつつ、ぼくを褒めては、
「ペロってはせんとばい!ちゃんと口は閉じたまま、ほんとにチュッってするとばい!こんな可愛い技見たことある?」
と、ぼくのチュッ!について ははまるやととまるに 力説します。
「本当よね~お利口さんね~いっぱい覚えたね~」
とぼくをなでなでする ははまる。
その横で、
「頭のふとかけん覚えるとだろ!?」
と今日も感じの悪いととまる。
そんなととまるですが、特にハイタッチがお気に入りで、ぼくにおやつをあげられるチャンスがあると、すぐにぼくとハイタッチをしたがるので、困ったものです。
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